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ふれあいのあるまち押沢台に暮らす

豊田洋一さん・育さん

押沢台北町内会で行われている「ブラブラまつり」。その発案者は、中部大学名誉教授で押沢台に長年住む豊田洋一さんです。町内に小さなにぎわいやふれあいが生まれることを期待してはじめた行事は、地域のつながりを強くし、あたたかな交流は日常のものとなりました。

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住民の顔が見える
一日限定のお店屋さんごっこ

「そばを打ったから」「庭の花が咲いたから」と、ご近所からおすそ分けをもらう。そんな日常の延長で、特技や趣味を生かして一日だけ家先を解放して店を開いたら面白いのでは? という洋一さんのアイデアから生まれた「ブラブラまつり」。

北町内会ではバスを貸し切って出かけるミニ遠足が親睦行事の恒例なっていましたが、参加者は少なく、顔ぶれは毎年同じでした。2011年に町内会長になった洋一さんは、もっと多くの人が参加し、親睦を深める行事ができないかと考えたのです。

背景には、高蔵寺ニュータウンが抱える状況もありました。まちびらきから時間が経って高齢化が進み、住民同士の助け合いが求められること、プライバシー重視の風潮のなか建てられた押沢台周辺の住宅は、周囲を生垣やフェンスで囲み、近所に閉鎖的であったことなどです。

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楽しくって、簡単!
だから続けられる

ブラブラまつりの魅力はたくさんありますが、特長的なのは個人発信であること。自宅を開いて、自分や家族の好きなこと得意なことを生かした店をやる。町内会からこんなことをやってほしいと依頼したり、制限することはありません。

「まち全体を使った謎解きゲームをやる店があったり、赤字になるほどサービスしてしまう食べ物屋さんがあったり。出店者のアイデアやおもてなしの気持ちで自由にやっていることがまつりの魅力になっています」と育さん。

一方で、庭や駐車場にブルーシートを敷いて、不用になったものを並べる簡単なガレージセールでももちろんOK。ハードルの低さも参加者が増えている理由です。

豊田夫妻も毎年出店し、炊き込みごはんや甘酒を用意したり、畑で育てた野菜と加工品を販売したり、落ち葉絵や切り絵作品を展示したり。毎年何をしようかと考えるのも楽しみなのです。

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ブラブラまつりは
他のエリアにも波及

2012年の第1回目から続けてきた「ブラブラまつり」。ユニークな試みは周りにも波及し、押沢台の南町内会や高蔵寺駅近くの気噴町などでも開催されるようになり、高蔵寺ニュータウンやその周辺の盛り上がりに一役買っています。

高蔵寺だけでなく、岐阜県の多治見市や可児市でも開催されているほか、関西圏のニュータウンから視察が来るなど、北町内会をお手本に「ブラブラまつり」をまちづくりに生かしたいという声が広がっています。2018年には、「住まいのまちなみコンクール」で、国土交通大臣賞を受賞。豊田夫妻は表彰式に参加し、2022年には洋一さんが基調講演も行いました。

2023年に10回目を迎える押沢台北の「ブラブラまつり」は、いつもよりちょっと華やかに開催。町内クジの景品を豪華にし、トヨタ自動車と一緒にシニアカーの試乗体験会の実証実験も行いました。

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やりたいことがいっぱい
70代はまだまだ若手!

ともに70代の豊田夫妻ですが、ブラブラまつりの実行委員を発足以来務め、毎年の企画やマップ制作、出店とフル稼働しています。「ブラブラまつり」のススメ本を作った際には、洋一さんは編集長、育さんは誌面デザインの制作から写真掲載の許可取りまで、なんでもこなしました。

普段の暮らしでは畑で野菜を育て、最近ではミツバチを飼って養蜂にも挑戦。さらに、洋一さんは落ち葉を集めて落ち葉絵を、育さんは切り絵作品をつくるのを趣味としていて、とにかくアクティブ。

「押沢台には70代、80代でも現役で元気な方がたくさんいます。70代前半の私たちなんてまだまだ(笑)」と育さん。ご近所さんとの交流が豊田夫妻の元気の源のようです。

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なにもないまちで誇れるのは、
人の魅力・住民同士のふれあい

「ブラブラまつり」は年に一度ですが、もっとやってほしいという声に応えて、2017年からは月に一度、自宅でお茶会をする「ブラっとカフェ」を開催しています。地域の居場所づくりが目的です。豊田夫妻は軽食や飲みもの、お菓子作りが上手なご近所さんが作る焼き菓子などを用意し、ギャラリーカフェをしています。

「押沢台には昔ながらの景観や歴史、文化といったものはなにもありません。ただ、いろいろな人が住んでいて、みんなで楽しくやろうという思いがあるだけ」(洋一さん)。その思いがカタチになっているのが「ブラブラまつり」なのです。

「押沢台には、それぞれに得意分野をもった方々がいて、なにかをやるときにはいつでも気持ちよく協力してくれる。人の魅力にあふれた自慢のまちです」(育さん)

自分のペースで暮らしを楽しみ、住民同士のふれあいも大切にする。「ブラブラまつり」をきっかけに、押沢台にはそんなコミュニティがつくられています。