住宅が立ち並ぶ岩成台の通り沿いに、ふいに現れる小さなショップ。扉を開けると、コーヒーの香りとともに祥江さんが迎えてくれます。ここは、自家焙煎コーヒー豆と多肉植物、ドライフラワーを販売するショップ。角田夫妻が自宅の庭に店舗を構えました。
家族みんなが
暮らしやすい環境を求めて
3人のお子さんがいる角田夫妻。名古屋市内に住んでいましたが、よりよい子育て環境を求めて2017年に高蔵寺ニュータウンへ引っ越してきました。
転居先を探す際に重視した点は3つあります。一つは仕事で行き来する岐阜や名古屋へのアクセスがよいこと、二つ目は子育てに関する行政支援の手厚さ、そして三つ目は自然豊かであることです。
いろいろなエリアを検討した結果、利便性と自然のバランスがよく、まちが広々としていて心地よいと感じた高蔵寺ニュータウンに決めました。そして、庭つきの二世帯住宅を購入。鼓勇介さんの会社のオフィス兼自宅として暮らしはじめました。
自宅の庭に
小さなショップをオープン
飲食業向けの卸売やコンサルティングを生業とする鼓勇介さん。コロナによる自粛生活をきっかけに事業の柱を増やそうと決めました。そのとき真っ先に浮かんだのは、コーヒー豆の焙煎です。実は鼓勇介さん、以前はコーヒーが苦手だったとか。そんな鼓勇介さんがコーヒーのおいしさを知るきっかけとなった自家焙煎コーヒー専門店があり、そのマスターのコーヒーを目指して、自分も焙煎に挑戦したいと考えたのです。事業計画を練りながら、マスターの指導を受け、地域のイベントなどに出店して焙煎の腕を磨き、2022年8月、自宅の庭にコーヒーショップをオープンしました。
「植物を育てたくて広い庭つきの家を購入しましたが、道路に面した庭は店をやるのにぴったりでした。自宅の敷地なので家賃はかからず、店番をしながら子どもたちの様子を見に行くことができるのも利点です」(祥江さん)
夫が焙煎するコーヒー豆、
妻の多肉植物とドライフラワー
ショップでは、鼓勇介さんが焙煎したコーヒー豆の販売とコーヒーのテイクアウトをしています。二人が理想とするコーヒーは、「おいしい深煎り」。キレのある苦みと後からくる甘み、冷めても味が変わらない一杯です。祥江さんの趣味が高じて多肉植物とドライフラワーも販売することにしました。
店番は祥江さんの担当。最近は委託販売にも力を入れ、店の雰囲気に合うと感じたお菓子や雑貨、アクセサリーを置いています。「常連さんもできて、コーヒーを飲みながらおしゃべりをするのが楽しいです。高蔵寺に来た頃は知り合いがいなくて自宅に引きこもりがちでしたが、今では店を通じてたくさんの友人ができました」
まちをもっと楽しくしたい!
「KOZOJI ICONIC MARKET」
角田さんは地元で開催するマーケットの主催もしています。「委託販売の相談に来てくれたクリエイターさんとマーケットをやりたいねと盛り上がったんです。高蔵寺まちづくり会社の方に話してみたら、『グルッポふじとう』でやりましょうということになりました」(祥江さん)
せっかくやるなら、高蔵寺を盛り上げるマーケットにしようと決めました。準備を進め2023年6月に開催した「KOZOJI ICONIC MARKET」は大盛況。「反響がすごくて、『次の開催はいつですか?』と聞かれたり、名古屋で開催する人気のマーケットに出店しているような方々からも参加したいと言ってもらいました。高蔵寺ニュータウンをアピールできるイベントとして、第2回、第3回と続けていきたいです」
人があたたかい高蔵寺で
老後も楽しく暮らしたい
名古屋から転居し、高蔵寺ニュータウンにすっかりなじんだ角田夫妻。あらためて高蔵寺はどんなまちだと感じているのでしょうか。
「引っ越してきたばかりのころ、町内の組長をやることになったんです。そうしたら、裏に住むおばあちゃんが『回覧板を回すときは一緒に行くからいつでも声をかけてね』と言ってくれて、あたたかいところだなって。学校の雰囲気も全然違います。名古屋の小学校はマンモス校でしたが、今次男が通っている小学校はひとクラスしかなくて校長先生も生徒の顔と名前を知ってくれている。そんなアットホームな環境が気に入っています」(祥江さん)
「名古屋のマンションに住んでいたころは、近所づきあいはほとんどありませんでした。高蔵寺に住むようになって、私たち自身も地域との向き合い方が変わりました。高蔵寺の人たちは外から来た人を歓迎してくれるムードがあると感じます」(鼓勇介さん)
「おじいちゃん、おばあちゃんになってもここで楽しく暮らしたい」。角田夫妻はそう笑顔で話してくれました。