バックパックを背負って登山をしたり、木の実を拾ってアクセサリーを作ったり…。自然の中で遊ぶのが好きという作本あゆみさんは、高森山の保全・再生活動をしています。その活動の源には、高蔵寺の豊かな自然を次世代へ引き継いでいきたいという思いがありました。
自宅のすぐそばに、
こんな素敵な山があったなんて
作本さんが高森山に関心をもったのは、春日井市が配布していたまちのガイドブックがきっかけ。登山が趣味で、弥勒山にはよく登りに行っていたものの、ガイドブックを見るまで高森山の存在は知りませんでした。
作本さんが感銘を受けたという、高蔵寺ニュータウンの開発に携わった建築家夫婦のドキュメンタリー映画「人生フルーツ」。その中で、高森山を再生するストーリーが描かれていたことも関心をさらに後押ししました。
その後、「高森山公園フォレストサポーター養成講座」の参加者募集を見て講座に参加。里山整備の楽しさを知り、フォレストサポーターとして、さらに高蔵寺ニュータウンのまちづくり活動を行うNPO法人「高蔵寺どんぐりs」のメンバーとして、高森山の再生活動に参加するようになりました。
自然豊かな里山を守るには
人の手が必要
今では高蔵寺ニュータウンのシンボルとなっている高森山ですが、少し前までは繁茂した樹木による景観悪化などが問題となっていました。そこで、フォレストサポーター養成講座では、高森山を魅力的な里山として維持するためのノウハウを学ぶフィールドワークを実施しています。
「『手付かずの自然』と聞くと、自然が守られていてよいことだと思っていましたが、講座では、人が介在して自然を循環させていくことの大切さを教えてもらいました。生い茂る樹木を除伐して森に太陽の光を届け、除伐した木で土砂流出防止の柵を作り、地面に覆いかぶさった落ち葉をかいて新芽の生育を促します。そうやって人の手で整備することで、森は健全に維持される。フォレストサポーターになってたくさんのことを学びました」
高森山整備はライフワーク
達成感がたまらない
「高森山のことを知って初めて登りに行ったとき、怖いと感じるほど鬱蒼として暗かったのを覚えています。今ではふらっと一人で散歩に行けるほど明るくて、見晴らしのよい森になりました」と作本さん。人の手で整備されるようになった高森山は、現在50種の動物、350種の植物、150種の昆虫が生息する、多様性豊かで地域に愛される里山に再生されました。
「こんなにも多様性に富んだ森が自宅のすぐ近くにあるというのは、高蔵寺ニュータウンに住んでいるからこその豊かさだと感じます。高森山整備のメンバーと山に入って汗を流すのはとっても清々しく、自分たちの活動で山が見違えるのを実感できるので、達成感があってやめられません」
高蔵寺を愛する人たちと
楽しくまちづくりを
作本さんが参加している「高蔵寺どんぐりs」には、高森山整備以外にも高蔵寺のまちづくりのために活動をしている熱心なメンバーが多く、大いに刺激をもらっているのだとか。
「自分より上の年代の方々が『自分のまちをよくしたい』とアクティブに活動されている姿を拝見すると、私たち世代がしっかりと後を引き継ぎ、次の世代へとつないでいきたいという意欲が湧いてきます」
「高蔵寺どんぐりs」では、高森山に詳しいメンバーによる自然観察会が季節ごとに行われ、みんなで楽しみながら学んでいます。作本さん自身も、講師を招いて野草について学ぶ会を主催したり、高森山の木の実を拾って食用にしたり、工作したりする講座を各所で精力的に行っています。
子どもたちの世代へ
高森山を引き継いでいく
元々は保育士だった作本さん。今後は高森山をフィールドにして、子どもたちに自然の面白さを伝える活動をしていきたいと考えています。
「子どもを預けながら忙しく働くお母さん、お父さんを見ていると、子どもと関わる時間が取りづらい現状を実感します。そんなご家族が、休みの日に自然豊かな高森山で気持ちを解放しながら遊べる機会をつくれたらいいなと思っています。高森山の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたいし、子どもたちが大人になったときに遊んだことを思い出して、高森山の自然を大切に思ってくれたらうれしいです」
豊かな自然を守り、伝え、つないでいく。作本さんの活動は、高蔵寺の未来へとつながっていきます。